コドモタチのレッスン中。
ドアベルが鳴る。
と同時に「すみません!」の声。
玄関先に立つのは見知らぬ男女、小学中学年か。
「助けてください!」
……穏やかでは無い。
「ボールが、いや、ボールみたいな…」
「わたしたちが……」
訳を聞くとそれぞれが単語で話し始める。
【コドモタチあるある】である。
「何を言っているかわかりません。
それじゃ助けたくても助けられない。
きちんとお話ししてください。」
一喝したらようやく文章が返って来た。
遊んでいたオモチャが自販機の裏に入り込んだので探せと言う。
自分で探してくれよ、心の中でつぶやく。
でも頼ってくれた子供達を無下には出来ない。
教室のコドモタチに断りを入れて外へ出る。
おや?
子供の数が4人に増えてる。
しかもひとりは我が生徒。
自販機に携帯アプリの懐中電灯で灯りを当てる。
探し物はすぐ見つかった。
「何か言うことは?」
「ありがとうございます」と、男の子。
“Thank you.” と、我が生徒。
あら素敵★センセーの顔が見てみたい。
で、その翌日。
昨日の生徒に聞いてみる。
「◯◯くんがオーラに頼もうって言ったの」
あら、てっきりアタクシはアナタが言ったとばかり……
アタクシは知らない◯◯くん、アタクシを知ってたらしい。
このマンションの住民だとか。
いつも外でゲームしている中のひとりかな。
挨拶し返さないくせに顔は覚えててくれたのね。
ちょっと嬉しい♫
アタクシの夢は【長屋のババア】。
口うるさくて近所の子供に煙たがられる、そんなババア。
昭和の時代にはたくさんいたね。
今の時代は誰彼声をかけるの難しいけれど、
アタクシその第一歩は踏めてるかしら、◯◯くん。
時に◯◯くん、君もこの輪に入らないかい?